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2011年8月1日月曜日

警察のお世話になります!?・・・出頭。【前編】

例年よりも早く梅雨明けした東海地方。
天頂から照り輝く太陽と灼熱の湿度を含む熱風、彼方には陽炎が立ち昇る道路に僕は立ち止まる。
本格的な夏の暑さが始まっていないにも関わらず、
汗が滝のように流れ落ちワイシャツに滲む汗が不快感を高めてくれる。




道路脇の電柱に掛けられた白い看板が道を行き交う人々に訴えかける。
日本各地の道路脇にもあなたの通勤通学路経路にもきっとあるはず、交通事故の目撃情報を求めひっそりと立つ看板を。


小学生の頃、先生が話していた言葉が脳裏をよぎった。人が見ていなくてもいつもお天道様は見ている話を。
この話には続きがある。
良い事をして人に見られていなくてもちゃんとお天道様はあなたを見ていること、
そして
悪い事をして人に見られていなくても必ずお天道様はあなたを見ていることを。


そして僕は決断を選択しないといけない。・・・逃げるのか、と。


駐車場に停めた車の中で深呼吸をする。
もうここまで来たら後には引き返せない。
ドアを開けると「今年の最高気温を更新した・・・」というラジオ放送を思い出しながら
湿度も高く、もやっとする灼熱の外気温に気が滅入り意識を失いそうだ。
意を決し建物を見上げると、
築30年以上は経過し本来は白亜だったであろう薄汚れた警察署の玄関敷居を跨いだ。


浜岡原子力発電所の停止に伴う電力不足の影響により
中部地方でも官庁始め公共機関・企業共々節電を実施している。
警察署も例外なく署内はもちろん冷房は稼動していないようだ。
扇風機もデスクの所々で首を振りながら稼動しているが我慢できないほど暑い室内ではない。
殺風景な署内に足を踏み入れ驚いた事は、
カウンター越しでは警察官が行き交い電話する者、談笑する者、来客と対応する者と様々な警官の景観だった。
刑事ドラマとは違いこの場所には緊張感が全く無く事務的な現実とドラマの虚像とのギャップに僕は驚いた。


                    ※
今から数年前、朝靄の中を男の銀輪が風を斬り疾走していた。
銀輪のすぐ後ろを白黒の車体が追いかける。
男が乗る銀輪は警察車両から逃げていた。逃げて逃げて、しかも主婦の味方買い物用自転車で。
しかし巡回中の警察車両(以下パトカー)と主婦の味方買い物用自転車(以下ママチャリ)では勝負になるはずもない。
そもそもが無謀な逃走だった。
しかし男は最後まで逃げ切る覚悟でいた。
ママチャリで逃げ切るつもりでいた。
ママチャリだけど逃げ切れる根拠のない自信が男には何故かあった。
不審なママチャリを追いながら車内に搭載されたマイクで警官は吠える。
「そこの自転車止まりなさい」
止まれと言われて止まる馬鹿はいるのだろうか、

男は振り向きながらパトカーに訴える。
「今、それどころじゃないから~」
「いいから止まりなさい!」


タイヤが悲鳴をあげながらも本来はこんな使い方を想定していないママチャリ。
それでも男は必死の形相でパトカーに構わずひたすらママチャリで逃げた。
何度目だろう。一向に止まる気配を見せないママチャリに痺れを切らした警官は、強引にママチャリの逃走経路をパトカーで防いだ。
運転席から若い警官が助手席からは年輩の警官が降りながら怒号交えそれぞれ発する。

「なぜ君は逃げるんだ?そこの鞄の中身は何だ?何が入っている?何処に行くつもりだ?」

この世界には主婦の味方はいないようです。

矢継ぎ早に質問(職務質問)をする警官には緊張の表情が見え隠れする。
それもそのはず不審人物の鞄の中の所持品と逃げる男の素性に彼ら警察官は興味があるらしい。
男は悪ぶれる素振りをみせず、そして抵抗することなく
肩で息をしながら呼吸を整え、眼を血走り腕時計を見ながらここぞとばかりに暴言を吐かずにはいられない。

「おいおいおい!電車に乗り遅れるだろ?これから大阪で試験なんだよ!遅刻したら責任とってもらうからな!」

男は果敢にも国家権力に楯突いた。
それでも彼ら警察官は無表情なまま男の戯言を最初から信用していない。
職務質問に抵抗する者の態度は想定内なのだろう。
男は迫り来る時間(発車時間)を腕時計で再度確認しながら警察官との押し問答を諦める。
そして不本意ながらおずおずと鞄の中から一枚の紙切れを警察官の目と鼻の先に堂々と提示した。
鬼気迫る言葉ではなく警察官は男が提示した”大阪府警察官第一種採用試験受験票”
たった一枚の受験票で不審人物の供述を晴れて信用した。
47都道府県の中で警察官採用試験に向かう当日に不審者扱いで職務質問を受けたのは僕だけでしょうか?





そんな彼ら巡回中の勤勉警察官は
「岐阜県の警察試験を受けてくれよ。」
「そんなに必死に逃げなくても・・・」
・・・・彼らなりの警察官の笑えない冗談です。

                    ※
当時、未来の警察官に対して職務質問をした警察官の見透かす冷めた目と同じように
2011年夏。カウンター越しに警察官特有の冷めた目で、予期せぬ訪問客を警察署は招き入れた。


【次回:警察のお世話になります!?・・・出頭。後編】

Ciao

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